『風立ちぬ』感想。 宮崎駿監督の「こうあってほしい」といった夢想をこれでもかとブチ込んだ夢想無双ではあると思います。でも、あれもこれも都合良く描かれているわけじゃなく、むしろ、描かれているのは矛盾ばかり。それでも、監督自身が、この物語をどうしようもなく切望しているような筆致は拭えない。といった矛盾のなかをぐるぐるさせられてしまう映画でした。 下級生をいじめる上級生を投げ倒す正義感を持っていたかと思えば妹との約束をうっかり忘れてしまったり、純粋な夢として追い求めている飛行機づくりが戦争に加担することを知っているけれど、そこまで気にかける感性は具わっていなかったりで、とにかく主人公・堀越二郎に掴みどころがないです。庵野監督の無為な声がそれに拍車をかけます。人間味を感じるのだけど何を考えてるのかわからないという矛盾した印象。この印象が映画全体に妙な雰囲気を落とし込んでいるんですが、そもそも登場人