ブレヒト版『アンティゴネ―』を日本語で演じた方々は、大変な苦労をされたに違いない。以下の誤訳の伝染を目にすると、僕はそう思わずにはいられない。 1975年(千田是也訳、「俳優座第124回上演台本」より) […]ここにお集まり 願ったのは、とりわけ二つの理由がある。 そのひとつ、諸君はまだ戦の神にまだ、 敵を踏みにじった戦車の代価を払っておらん。 戦場で神に捧ぐべき息子たちの血潮も 出し惜しみしておる。それに彼らがもし、 暖い屋根の下に戻って気が緩んだりしたら、 ますます勘定は高くつくに相違ない。 だから流されたテイバイの血の代償はな、 一刻も早く規定どおり払ってもらいたい。1977年(井本道子/W・ミヒェル訳、「福岡現代劇場上演台本」より) つまりここに集まってもらったには特に二つの理由がある。 そのひとつ、諸君は戦さの神に支払う、敵を踏みつぶす 戦車の代金の収支をないがしろにし、 戦場で