決して嫌いなのではない。好きになれない。 子どもの頃、親が回転寿司へ行ってくれることになった時も、ふつうの子どもなら喜ぶと思うが、まったくテンションが上がらなかった。 むしろ回転寿司に行くのは憂鬱でさえあった。 カウンターの寿司屋に行った時、テイクアウトの寿司が夕食に出てきた時、法事の席に出前の寿司が並んでいた時。寿司を食べる機会は何度もあったが、一向に好きになれなかった。 なぜなら、おいしいと感じないのだ。大人になれば、酒が飲めるようになれば、高い店に行けば、寿司がうまいと感じる日がいつか来ると期待していたが、そんな日はとうとう来なかった。