「電王戦」 これから書く数行は、職業棋士として気が重いし、できれば曖昧にぼかして済ましたいのだが、コンピュータと人間の勝負もある程度闘いを繰り返し歴史を作った今、やはり書かざるを得ないだろう。 今のプロ棋士で、コンピュータより人間――我々プロ棋士が強いと本気で思っている者は、ほとんどいない。 ここ一年でどんどん空気が変わってゆくのを、私は内部の人間として肌で感じていた。一年前は、いい勝負だが、心理的なものや詰みの正確性などを考えると、闘うと人間が分が悪いのではという者が多かった。もちろん、己の誇りにかけて棋士が上という者もいた。ごく一部のリアリストたちがもう勝てないだろうと事態を考えていた。 半年前には、私より後輩で、リアリストでない者はごくわずかになっていた。ソフトが進化したということもあるが、人間が現実を認めざるを得なくなっていったのだ。ヒトは己の能力を過信しやすい。ましてそれまでの人
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