2010年に強盗致傷事件の裁判員を務めた小田篤俊さん(44)は、そう思っている。 10年ほど前のことだ。日曜の夜に、学生時代に行きつけだった東京都内の飲み屋に立ち寄った。午後11時半ごろ、帰宅するために地下鉄に乗った。車両の連結部分近くの一番端の席に座り目を閉じた。 数駅が過ぎたところで目が覚めた。乗客はほとんどおらず、車両内はガラガラ。なのに、なぜか席を詰めるように、隣に30代後半の女性が座っていた。「どうしてわざわざここに座るの?」と思いつつも、また目を閉じた。 さらに数駅。突然、女性がひじで小突いてきた。 「いま、触ったでしょ!」。女性は騒ぎ始めた。仕方なく、次の駅で降り、小田さんがホームのボタンを押して駅員を呼んだ。話せばわかると思っていたからだ。 駅員が飛んできた。「警察を呼びます」。そう言って、小田さんの腰のベルトを後ろからつかんだ。その態度に腹が立った。 まもなくパトカーが来