何があっても すべて あの時のときめきから 始まっていることを 忘れるものか NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の中で、少女漫画家を目指すヒロインの鈴愛(すずめ)が、実在する名作漫画『いつもポケットにショパン』のワンシーンに出てくるモノローグを口にした瞬間、かつて同作を夢中で読み耽(ふけ)った多くの人の心に、作者・くらもちふさこが甦(よみがえ)った。 1980年に『別冊マーガレット』に連載されたこの作品は、幼なじみの麻子と季普(きしん)が母親同士の過去の因縁を乗り越えて、ピアニストを目指す本格的なクラシック音楽漫画。 ヒロインの鈴愛は、この漫画に惹かれて漫画家となるが、やがて、挫折を経験して筆を折る。 「私もスランプになって原稿を落としたことがありました。それでも漫画が大好きで、描き続けてきました」 漫画家デビューを飾っておよそ半世紀。その道のりは決して平坦ではなかったが、スランプや病に