ブックマーク / kyouki.hatenablog.com (3)

  • 短編小説18 『Aリスト』 - ICHIROYAのブログ

    Photo by sisssouBy: sisssou 「はい、では、大手広告代理店に入れるなら入りたいと思っている人、手を挙げてみてください」 『一回生から始める就活セミナー』の講師はそう言って、50人はいるであろう学生たちを見渡した。こんな機会でも積極的である姿勢を見せたほうがいいかもしれないと思っていた賢治は、前から三番目の席に座っていた。 ――― 大手広告代理店!クリエイティブな仕事で、高給で、社名を言う度に、誇りで満たされるに違いない。 一瞬考えてからであったが、賢治はさっと手を挙げた。 ―― ほかの人は? 賢治は肩越しに後ろを見た。ひとり、またひとりと手を挙げ、やがて三分のニぐらいの手が挙がった。 「はい、ありがとう。やっぱり、人気ですね。では、まったく別の質問をします」 講師はにこやかに微笑みながら、こう訊ねた。 「原発については、どうでしょう。反対の人。まず、即時に、すべて

    短編小説18 『Aリスト』 - ICHIROYAのブログ
    sakatsu_kana
    sakatsu_kana 2016/07/29
    Aリストを作って売ろうと思いました。
  • 短編小説17 『星の振袖』 - ICHIROYAのブログ

    photo by  Jukka Hernetkoski の純子が天体望遠鏡を買った。 「藍子の勉強のためにもなるし」 純子は言うが、ビクセン・ポルタII とかいうその天体望遠鏡は、れっきとした大人の天文観測入門機らしく、子どもが簡単に扱えるものではない。 結婚して10年、2年目に生まれた長女、藍子は、まだ小学校の2年生である。 僕は憤慨した。いや、それ以上に、真っ暗な底なしの穴に吸い込まれたような不思議な気分になった。 第一に、数万円ものお金を夫婦どちらかの趣味に使うのなら、僕の了解があってしかるべきだ。だって、僕にしてもそんな金額を趣味に黙ってかけたことはないし、そういう場合はいつも、ボーナスを見据えて半年近い根回しをしたうえに、幸運にも説得が成功した場合にのみ、許されてきたのである。 第二に、いったい、いつから純子は星や宇宙に興味を持つようになったのか。彼女の一番の趣味と言えば、結婚

    短編小説17 『星の振袖』 - ICHIROYAのブログ
    sakatsu_kana
    sakatsu_kana 2016/07/19
    読む目を引き剥がせないまま一気に最後まで読ませて頂きました。
  • 短編小説16 『MGB』 - ICHIROYAのブログ

    photo by  Ian Southwell 「お前の骨は拾ってやるから、安心しろ」 安木部長はたしかにそう言ったのだ。 今は平成の時代で、昭和が終わってから、すでに二十年数年以上、世の中は流れているはずである。だが、僕の勤めるこの会社、ある大手通販専門会社では、どうやら時の流れは止まっているらしい。 「わかったな」 なんでもお見通しだというような鋭利な視線で僕を射抜いた安木部長は席を立った。 はいとも、いいえとも、僕は答えられずにいた。 いや、ひょっとしたら、無意識に、僕は小さく顎を引いてしまったのかもしれない。 答えを聞くまでもない、ドアを開けて面談室を出て行った安木部長のグレーのスーツの広い背中がそう言っていた。 呆然とソファに座ったまま、僕はすぐに腰をあげることができなかった。 翌日、新規サイトの概要を取締役のひとりにプレゼンするのである。新規サイトは、ある最新のインクジェットプ

    短編小説16 『MGB』 - ICHIROYAのブログ
    sakatsu_kana
    sakatsu_kana 2016/07/14
    自分なら、という感情移入度が非常に高くなり、周りの音が何も聞こえなくなるほど集中して読めました。すごい。
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