photo by Jukka Hernetkoski 妻の純子が天体望遠鏡を買った。 「藍子の勉強のためにもなるし」 純子は言うが、ビクセン・ポルタII とかいうその天体望遠鏡は、れっきとした大人の天文観測入門機らしく、子どもが簡単に扱えるものではない。 結婚して10年、2年目に生まれた長女、藍子は、まだ小学校の2年生である。 僕は憤慨した。いや、それ以上に、真っ暗な底なしの穴に吸い込まれたような不思議な気分になった。 第一に、数万円ものお金を夫婦どちらかの趣味に使うのなら、僕の了解があってしかるべきだ。だって、僕にしてもそんな金額を趣味に黙ってかけたことはないし、そういう場合はいつも、ボーナスを見据えて半年近い根回しをしたうえに、幸運にも説得が成功した場合にのみ、許されてきたのである。 第二に、いったい、いつから純子は星や宇宙に興味を持つようになったのか。彼女の一番の趣味と言えば、結婚
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