今週のお題「元気を出す方法」 元気が無い時、元気を出すために自ら何かに働きかけるのはしんどい。 最近ふっと顔がほころんだり、心が和んだりする出来事を思い出す事があって、この仕事が嫌だとは思わない。 斎場前に霊柩車が到着し、故人の棺と遺族が降車する。 毛糸の帽子をかぶり、両手に毛糸の手袋をはめた小柄な高齢男性が「よいしょ、よいしょ」と降車し、前のめるように両手を前後に振って小刻みに歩いて告別室に入る。椅子に腰かけるまで転倒しないか気になって見ていた。 炉前で棺の蓋を開けて遺族は故人に最後のお別れをする。 故人が90代の女性で、その男性はご主人と思われた。 お別れを促されてその男性は小刻みに歩いて棺に近づき、棺の端に毛糸の手袋をはめた両手をかけて背中を伸ばし、棺の中を覗き込んで言った。 「おかあさん、かわいい!」 その一言で一気に場の空気が和んだ。 「おかあさん、おかあさん、天国で会おうね」