東西5000キロの33州が沸いたインドネシア大統領選は、推計投票率80%(14日現在)で、平穏に終わった。首都ジャカルタでは、市民が「印米に次ぐ世界3番目に大きい民主国家」の成熟を誇らしげに語る。だが、そこから80キロしか離れていない近郊の山地に「投票率ゼロ」の村があった。信仰と生活風俗の考え方から、選挙を含めたあらゆる文明と無縁の生活を守る人々が今も暮らす。文明を拒む小さな集落のたたずまいを紹介する。【カネケス村(インドネシア・バンテン州)で井田純】 カネケス村は、ジャカルタから車で4時間弱。「バドゥイ族」と呼ばれる人々が暮らし、村の入り口の門の脇には「すべての乗り物の進入を禁ず」の立て札があった。カネケスでは自転車すら許されず、電気も通じていない。乗り物すべてがタブーなのだ。 北米に多いプロテスタントの一派「アーミッシュ」も文明を拒む信仰だが、移動には馬車を使う。バドゥイ族はさらに禁欲