石原慎太郎氏は、なぜ中国を「シナ」と呼ぶのか。そして、中国は、なぜ「シナ」と呼ばれることを嫌がるのか。昨日の「石原慎太郎氏の『シナ』発言とナショナリズムの台頭について」という記事では、新聞を参照しながらその2点について考えてみた(「石原氏 シナ発言の危うさ」、東京新聞、10月31日付)。 考えてみれば、石原氏は政治家になってから、ほぼ一貫して中国を「シナ」と呼び続けている。だが、彼の「シナ」発言は、時に無視され、時に支持される。では、中国を侮辱するような呼称が、無視されたり支持されたりする原因は、いったい何なのだろう。 ■中国を「シナ」と呼ぶ必要がなかった時代 戦後の日本は、敗戦の混乱を乗り越え、1950年代半ばから高度経済成長期に入る。人々は、働くことに必死であった。そして、1970年代半ばまで続いた経済成長により、企業では終身雇用制が定着するなど、それほど不満のない生活を送る人々が増え