「ガンダムF91」について、簡単にまとめておきたい。結論を先に書いてしまうと、これはは「偽史同士の抗争」を描いた作品だ。この構図は、これ以降の富野作品の基底をなすことになる。富野作品をVガンダム前後、つまり黒だの白だので分けるのは少し違うと思う。彼のターニングポイントは、このF91だ。 これは目指すべき「未来」が死んだ時代の物語だ。劇場公開が1991年だから、その頃の時代状況を反映しているのだろう。マルクス主義という未来を奉じていた旧東側諸国の政体がつぎつぎと崩壊し、資本主義と西側諸国の勝利が明白になった時代。日本はバブル最後の年でもあり、昭和天皇が崩御して平成天皇へと代替わりしたころ。 この時代を境目にして、日本では次のような言説が目立ち始める。おそらく「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまで呼ばれた当時の日本の経済力と、昭和天皇の死が、日本人の素朴なナショナリズムを刺激したのだろう。また