2019年秋、シングル『何なんw』でデビューを飾って以来、大きな注目を集めている藤井風。R&B的な洒脱さと昭和歌謡を思わせるシンプルな骨太さをあわせもつメロディラインや和声感覚、そしてたしかな歌唱力を持つシンガーソングライターとして、その楽曲やパフォーマンスは新人とは思えない貫禄を持つ。Yaffle(Tokyo Recordings)をプロデュースに迎えた1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』は、オーセンティックさをにじませるソングライティングにコンテンポラリーな響きが加わった一枚に仕上がっている。2020年の日本のポップミュージックを代表しうる作品だ。 藤井風『HELP EVER HURT NEVER』(通常盤) 先述したシングルのタイトル「何なんw」から伺えるように、藤井の言語感覚はかなり特異だ。ふざけたようなネットスラング(「w」の用法)を折り込みつつ、しかし歌詞