最近、経済誌やテレビなどで3Dプリンターの話題を目にする機会が増えてきている。火付け役はクリス・アンダーソンの『MAKERS』(NHK出版)だが、確かに「誰もが作り手になれる」というコンセプトは心を躍らせる。一方で、3Dプリンターへの過熱する期待に警鐘を鳴らす識者の意見もあり、現在の実力を鑑みればうなずける点が多い。それでも注目したいと思わせるのは、生産の常識を覆す可能性を秘めているからだ。 現代において最もポピュラーな大量生産の手段は、金属ならプレス加工、樹脂なら射出成形だろう。これらは、加工法の形態こそ全く異なるが、いずれも金型を使うという点が共通している。金型は、それ自体を造るのに多くの手間や費用がかかるものの、いったん造ってしまえば安価かつ短時間で量産できるのが利点だ。 一方、3Dプリンターは主に樹脂の成形になるが、初期投資はそれほどかからないものの、1個当たりの成形コストや成形時