伊吹吾郎はいる 「ねえお父さん、サンタクロースって本当にいるの?」 と娘に訊ねられて、どう答えたらいいかよりも先に、まず私が考えたのは「初めてその質問をする年齢として『小学二年生』というのはどうなのよ」ということだった。クリスマスイブの夜に子供にプレゼントをくれる存在としてのサンタクロース、そのファンタジーを実在のものとして信じる年齢として、小学二年生、七歳というのは、いかがなものなのか。 いやそれ以前の問題として、そもそも私は、どちらかといえばそういう虚飾を否定する側の人間ではなかったか。ミッキーマウスは世界で一人だけだとか、夜に爪を切ると親の死に目にあえないとか、卒業式の日に校庭の木の下で女の子から告白して生まれたカップルは永遠に幸せになれるとか、そういうのを全部「それはまあ端的に言えば嘘だ」と断じる人であり、ドーキンスの「悪魔に仕える牧師」を読んで、そうだそうだよなあいいこと言うなあ