東京オリンピックが閉幕した。選手の活躍が連日報道された一方、大会期間中に新型コロナウイルスの感染者が増え、医療態勢は逼迫(ひっぱく)。国民は開催の賛否で二分された。異形の五輪は何を残したのか。法政大前総長で江戸文化研究者の田中優子さんは、社会の分断について「五輪後も怖い」と危惧し、なぜ五輪を楽しめなかった人がいたのか、「想像することが大切」と話す。【山下智恵/デジタル報道センター】 コロナに楽観的な政府 ――五輪が8日、17日間の日程を終えて閉幕しました。どんな感想を持ちましたか。 ◆今回の五輪、あまり見ることができなかったんです。母の老老介護に加え、私の体調も良くなかった。その時、今の日本に「五輪どころではない人々」がたくさんいることに想像が及びました。コロナの感染患者、対応する医療従事者。コロナ禍で仕事を失って求職中の労働者や、食べ物を得るために配給に並ぶ人など。賛否以前に五輪を楽しめ