子供のころ、歯磨きをしているオヤジが「オエーッ!オエッ!」と奇妙な声を出しているのが不思議で仕方なかった。家中に響き渡るほどの大きな声だった。僕は「オヤジどこかカラダがおかしいんじゃね?」なんて思っていた。ところが僕も30を過ぎたあたりから同じような声が出るようになった。歯ブラシを奥歯の方に突っ込むだけで胃のあたりから何かがこみあげてきてオエーッとなる。なにかを産んでしまいそうな勢いのオエーッ! 僕の家系特有の「癖」みたいなものだとずっと思っていたのだけど、どうやら違うらしい。ある朝、歯を磨いているとどこからともなくオエーッと聞こえてきた。ふと耳を澄ますと、至る所でオエオエ言っている。声に若さがないので同じ時間に出勤する近所のおっさん達だろう。負けずにオエーッとやると、どこからともなくオエーッ!と返ってくる。以来、そんな朝が続いている。 最近はオエーッがちょっとしたコミュニティになっている