目が覚めたら巨大な毒虫になっていた。一言で説明するならば人間サイズのムカデである。全身を覆う滑らかな装甲は飴色に沈み、毒腺を隠した顎は死神の大鎌。足音もしゃらりしゃらりと涼やかに、軍隊の如く整列した体側脚はしめて四十七対。悪くない。こいつは素敵にトゥーマッチだ。俺は鏡の前でひととおり自分の体を検分し終えると、顎をカチカチと鳴らしながら、この俺の姿に相応しい最期を思案した。 なんの因果か知らないが、なっちまったものは仕方ない。特段この世に遺恨があるでは無いが、とはいえ今の俺の姿はどう見ても忌まれ呪われ人に仇為すモンスターである。ならば与えられた役をきっちり演じてみせるのが真っ当ってもんだろう。モンスターはモンスターらしく無慈悲に貪欲に人を食らうのだ。薄着のティーンやら昼下がりの団地妻やら深夜のOLやらに背後から忍び寄り次から次へ丸かじりの踊り食い、そしてついには人間どもの知恵と勇気に打ち倒さ