■ヒトごろし 京極夏彦(きょうごく・なつひこ)さん 新潮社・2916円 本書の厚さに今までの最長作品かと思いきや、「4番目」とのこと。しかし、ひるむことなかれ。新選組の土方歳三を「人を殺したい」と思っている人物として構築し、幕末の動乱を何とも面白く読ませてしまう快作にして、怪作である。 本書は悠久の歴史を書くという企画の中の一つ。現代が舞台の「ヒトでなし」(2015年)に続き、今回は幕末を舞台にした。 幕末といえば明治維新、薩長、旧幕の2項対立構図だ。「しかし、明治維新はイデオロギーがそうはっきりしているわけでもない。戦いの作戦も大してなくグダグダのダメな戦争の見本」と分析する。「そこを書く時、どちらにも偏らず、一本芯が通っているものをもってくれば、双方のダメさがわかるのではないか」