離散数学は, 有限的で離散的な構造を扱う数学であり, 無限と連続で象徴される従来の数学とは対峙する印象がある. コンピュータ・サイエンスの発展に伴い, 離散数学の重要性が認知されているものの, 旧来の学校数学はそれに対応していない. 本稿では, 応用的な側面よりも, 教育的な側面に重点を置いて, 離散数学の特性を考え, 学校数学への導入の在り方を提言する. 標語的に言うと, 離散数学は「図を描き, 簡単な計算をして, 言葉で論証する数学」である. 離散数学の導入は, 日本の学校数学に欠けているものを補完する効果があるだろう. 1.はじめに まず, 次の問題を考えてください. 問題1. 図1の線の部分をたどって, すべての黒丸と白丸をちょうど1回ずつ通り, もとの位置に戻ることはできるでしょうか? この問題を大学生にやらせてみると, 彼らの中に, 次のような2つのタイプがいることがわかります