伝統は捏造される 『創られた「日本の心」神話』という本書のタイトルですぐにエリック・ホブズボウムの『創られた伝統』の日本における音楽版であろうことがわかる。その『創られた伝統』は、「伝統」と言われるものの多くが、後世になって人工的に創られたものであると欧州とその他の世界における実例を様々にあげ、それがナショナリズムの構築のためのイデオロギーと強く関係があることを解き明かした書である。 これは日本においても例外ではない。 特に、明治期の天皇崇拝と神道に関する「伝統」のねつ造ぶりは、まさにここまで行けば天晴という他ない類のものだ。それを最初自分は坂口安吾から学び、そして様々な神道の現代的な史学研究から学んだ。 捏造の告発は、外国からの視点が特に峻烈だ。例えば、明治6年から三十年以上日本に滞在し、俳句や古事記を世界に紹介した東京帝国大学の名誉教授のバジル・ホール・チェンバレンは、以下のように記し