年末に向け政府の来年度予算案編成作業が本格化する。新型コロナウイルス対策のため例年に増して物入りで、財政赤字、政府債務は膨張し、多くの経済学者が警鐘を鳴らす。ただ、政府は必要に応じてお金を発行できるのだから問題はないという説もある。現代貨幣理論(MMT)だ。政府・日銀は異端視している説だが、今の日本はMMT的な世界に足を踏み入れたようにもみえる。財政はヤバいのか?大丈夫なのか? 財政均衡は「クレイジー」な目標 大型書店に行けば、いくつものMMT解説書が並んでいる。その中でも「第一人者によるバイブル」のうたい文句が目を引く『MMT現代貨幣理論入門』(L・ランダル・レイ著、東洋経済新報社)を開いてみよう。 貨幣とは何なのか、から議論は出発する。取引の仲立ちをする「流通手段」として発明され、商品やサービスの「価値尺度」や、富を蓄積する「価値貯蔵」の機能も備えている-というのが一般的だが、MMTは