数年前、中東のある国で、大手自動車ディーラーを訪ねたことがある。そこで働く日本人の方のお話を聞くためだった。名前をS氏としておこう。その会社はトヨタ車の販売も多く手がけており、トヨタのOBであるS氏を社内指導に招いていたのである。訪問の主目的は当該国のビジネス事情と官庁との関係をヒアリングすることだったが、氏がご自分がしてこられた事について、淡々と話されるのを聞くうちに、次第に驚嘆の気持ちがわたしの中でふくらんでいった。以下はその時に聞いた話だ(ただし差し障りがないよう、本質的でない点は少し変えてある)。 S氏はもともと、人材育成と社内教育のために、その2年ほど前に呼ばれたのだった。車のディーラーは、業容が拡大すると、売ったらそれで終わり、では済まなくなる。まず、補修用のサービスパーツを自分で手がける必要が出てくる。さらに売上が増えると、自社で保守点検の修理工場を持つことになる。他の不慣れ
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