2011年8月29日、私は緊張のあまり興奮するのも忘れ、ただ耳を傾けていた。 何しろあの萩尾望都が目の前にいるのだ。 萩尾望都は、『トーマの心臓』『ポーの一族』『11人いる!』『半神』『残酷な神が支配する』等の作品で、私たちに深淵な世界を見せてくれる――愛と憎しみ、人間の儚さ、理解と赦し、諦め――美しい筆致と入念に作られたストーリーによって構成されたその作品は私たちを魅了せずにおかない。 こんな漫画を描く人は何を考えてきたのか、知りたい。 そして何よりも、萩尾望都に会いたい!(12歳で出会って以来、大好きな漫画家なのです。考えてみてほしい!) このような単純だけれど熱狂的な思いで行われた萩尾望都へのインタビューは2時間半にも渡り、萩尾先生には、自作において繰り返されるテーマである家族の問題を始め、愛と憎しみが混在する人間の不思議、SF、ボーイズラブ、そして『なのはな』以降の連作のテーマとな