【書評】『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』/廣瀬陽子・著/講談社現代新書/1320円 【評者】山内昌之(神田外語大学客員教授) 東京五輪パラリンピックがコロナ問題で延期された時、関係各所にサイバー攻撃が仕掛けられたこの事件はあまり注目されなかった。英国外務省によれば、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の仕業とされる。ドーピング問題でロシアの参加が拒否されたことへの報復だったようだ。 日本はそれに気づかず、日本人は何も知らなかった。衝撃を受けたのは、一部の政治通だけであった。これはハイブリッド戦争の脅威を予知させる事件にほかならない。日本人は軍事という観念をあまりにも狭くとらえがちな国民である。古典的な陸海空の戦争空間でなく、宇宙・サイバーを通した挑発や衝突は稀な現象ではない。こうした日常性と非日常性の交叉について、専門家の立場から警告を発しているのが本書なのである。 目まぐる