ニュースや情報番組に出演していた元NHKアナウンサー、内多勝康さん(54)は変わらぬ柔和な表情を見せていた。視線の先はカメラではなく、病児とその家族だ。医療型短期入所施設「もみじの家」(東京・世田谷)の朝の会。自力で体を動かすことが難しい子供たちの手足をスタッフがマッサージする。内多さんも「力が入ってきた。よしよし」と子供の手を優しく握る。もみじの家は、重い病気の子供と家族を支える施設として
呼吸器を装着する重症児もいる 現在、全国の重症心身障害児は推計4万人余りと、50年前の約2・5倍に増えています。入所者のうち「大島の分類1〜4」に該当する「狭義の重症児者」は、1万5000人程度です。したがって、入所の約2倍近い、少なくとも2万6000人が在宅で暮らしていることになります。 実は、公法人立の重症児施設は、在宅の重症児者支援に1970年代前半から、一貫して努力してきました。 社会福祉法人旭川荘が運営する重症児施設「旭川児童院」では、71年に「心身障害児(者)巡回療育相談事業」を全国に先駆けて始めました。児童相談所のケースワーカーと共に、旭川児童院の医師や保育士などが一軒一軒、自宅を訪問し、在宅で暮らすための助言を行うものです。 77年から「緊急一時保護入院」(のちの短期入所)を、89年から「重症児通園モデル事業」を全国5カ所の一つとして手がけており、のちに制度化されました。
東京都品川区は障害を持つ子どもから大人までを支援する施設を2019年4月に開設する。医療技術の発達によって障害者の重度化や高齢化が進んでおり、生涯を通じて活動できる場としての役割も担う。住民にも一部開放するなど地域とのつながりも強化し、障害者が暮らしやすい街づくりにつなげる。主に未就学の知的障害児を受け入れていた児童発達支援センターの区立「品川児童学園」跡地に「障害児者総合支援施設」(仮称)を
入所者など46人の殺傷事件が起きた相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」について、建て替えを決めた神奈川県に対し、障害者団体や有識者から見直しを求める声が強まっている。「施設から地域へ」という障害者福祉の流れに反するという考え方だ。県は園を建て直して「再生のシンボル」にしたい考えで、合意を探るという。 園は神奈川県立で、「指定管理者」と呼ばれる社会福祉法人が運営してきた。 「大規模収容施設は、時代の逆行以外の何物でもない」。10日に県が開いた公聴会。県内の障害者団体や有識者から意見を聴き、施設の構想に反映する目的だったが、建て替えへの異論が相次いだ。2006年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)では、障害者が地域社会の中で暮らしていくことを支援すると、国として明確にうたっている。 横浜市に家族が住む入所者も多く、114団体でつくる横浜知的障害関連施設協議会は、希望があ
共同住宅の一室に約200万円かけてスプリンクラーを取り付けた障害者グループホーム=大阪府豊中市で、山崎一輝撮影 重度障害者が入居者の8割を超えるグループホーム(GH)で、消防法令で定められたスプリンクラーが設置できない事態が相次いでいる。多くが集合住宅や賃貸の一戸建てを活用しており、工事の費用負担や家主の了解が得にくいことが主な理由だ。既存GHは、2018年3月末までに設置しなければ施設名が公表される。安全に避難できれば、未設置を認める特例を設けた自治体もあるが、専門家からは「原則、設置すべきだ」との指摘がある。福祉関係者からは「このままでは多くの障害者が地域から追い出され、住む場所を失ってしまう」との声が上がっている。 「工務店に相談したんですけど、あまりに大規模な工事になるので、現実的ではないと言われました」。大阪府豊中市内の住宅街にある築50年超の一戸建ての借家。30~50代の重度障
おだやかにお茶を飲む作本さん 「ようやく落ち着いた生活を取り戻しています」。2016年4月の熊本地震で避難生活を送る作本誠一さん(50)は、熊本県益城町にあるバリアフリー対応の仮設住宅で年越しを迎えた。 10代の時に建築現場での事故で頸椎を損傷し、首から下がまひしている作本さんは地震前、実家で会社員の弟と2人暮らしだった。 ところが、築100年ほどの自宅は全壊。病院や高校、障害者施設など移転を7回も余儀なくされた後、ようやく11月から今のバリアフリー仮設へ入居できたという。 このバリアフリー仮設は全6戸の長屋型で、全国で初めて造られた。間取りは2DK(37平方㍍)で、扉の幅は広く、トイレや浴室への段差もない。 地震前まで作本さんは、自宅で過ごすか、家族と買い物に行くことが多かった。 しかし、避難生活の時に自立生活を支援する団体に出会ったことで、同町内の在宅の障害者を支援したい意欲が湧いてき
熊本地震の前震から7カ月となる14日、被災者のために熊本県内で建設が予定されていたすべての応急仮設住宅が完成した。同県益城町と御船町でこの日新たに計48戸が完成し、16市町村に4303戸が整備された。 益城町の福富仮設団地にはバリアフリー対応の仮設住宅が全6戸整備された。2DK(37・3平方メートル)で、玄関やトイレ、浴室の段差を解消。出入り口の幅は80センチ以上で、車いすで楽に通ることができる。町によると、車いす利用者や視覚障害者など4世帯10人が入居予定という。 19歳の時に屋根から転落して頸椎(けいつい)を損傷し、車いすを使っている作本誠一さん(50)は町の避難所が閉鎖された後、町が役場近くに開いた「待機所」でバリアフリー対応の仮設住宅の完成を待っていた。作本さんは「これまでは自分の居場所がないような気がしていた。まずは入居してから、使い勝手を確かめたい」と話した。(大森浩志郎)
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