そのとき、背後の公園からひどく酩酊した中学生程度の男子が千鳥足で出てきて、隣にある公団住宅の駐車場に倒れ込んだ。そこではもう2人、同世代の男子が寝転び、焦点の合わない目で宙を見つめ、その周りをいずれかの弟とおぼしき幼い男児がケラケラと笑いながら走り回っている―― 多くの人がイメージする工業地帯・川崎を象徴する写真がカバーとなった『ルポ 川崎』。しかし、その内容は我々の予想を軽く凌駕する過酷な貧困の実態を伝えている これは『ルポ 川崎』(サイゾー刊)で描かれた川崎区日進町の光景だ。 不良勢力の頂点は暴力団で、劣悪な環境から抜け出す手段は、ヤクザになるか、職人になるか、捕まるか。中学時代に強盗で逮捕された経験を持つラッパーが登場し、彼らの口からは「日本刀持った友達の親に追いかけられた」「親戚のヤクザの指詰めを手伝った」という子供時代の思い出が語られる。「産業道路の向こう側なんて、中学生のポン中