〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第8回 No-fault compensation system (無責救済制度) 李 啓充 医師/作家(在ボストン) (2494号よりつづく) 社会の幻想,医療者のドグマ 前回(2494号),加藤良夫氏(愛知大学法学部教授)が提唱する「医療被害防止・救済センター」構想を紹介したが,特定の状況で何らかの身体的被害を被った人が損害賠償訴訟を起こさなくても被害の救済を受けることを可能にするという発想は,決して突飛なものではない。 医療以外の分野では,例えば,労働災害の補償,交通事故後の被害の補償に対し,損害賠償請求訴訟以外の救済制度が用意されている。損害賠償請求訴訟では,被害を受けた側が,「誰かの過失および過失と受けた被害との因果関係を立証」しなければ救済を一切受けることができないのだが,労働災害・交通事故については,被害を受けた側にそのような過酷な立証責任を
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