古民家再生のための最初の手順は事前調査である。調査の結果、これまで変化してきた間取りや構造を旧に復し、創建当時のままの復原図を描く。次に復原図と現状をにらみ合わせながら設計を進めるが、家族の希望と伝統デザインとのバランスをとる作業は意外に難しい。上条家でいちばん問題になったのは居間の“明るさ”だった。 古民家再生のためには、新築とはやや異なる手順が必要になる。明治の初めに建てられた本棟造りの家を再生するために、上条家では、建築家の降幡廣信さんの手で詳細な事前調査が行われた。 まず最初に現状を平面図に起こし、その上で柱1本1本の位置や痕跡、家族の思い出話の聞き取りなどを参考にしながら、新築当時から現在まで、間取りや構造がどう変化してきたのかを調べ、細かく跡づけていく。 上条家の場合、創建以来の最も大きな変化は、玄関の方向が90度変わったことだった。本棟造りは緩やかに傾斜する切り妻屋根を持つが