3月末だというのに関東では週中雪模様。 底冷えする寒さのなか、どんよりとした空を眺めていると、何だか家から叩き出された子供の頃を思い出して、やるせない不安と寂しさが襲ってくる。まだ元気だった頃の親が懐かしい。 家に帰ってテレビをつける。画面の向こう側ではカラフルなひな壇で芸能人がバカ騒ぎしているというのに、俺を取り囲んでいるのは頭の油でギトギトに変色した枕、すえた臭いを発するビールの空き缶、何年も前のグラビア誌。グラビアの表紙を飾った子をスマートフォンで検索してみたが、その後それらしい活動をした形跡はない。主婦になったのかな。第二の人生を楽しく歩めているといいな。 鈍い音で独り言をつぶやき続ける冷蔵庫だけが俺の友だちだ。電気を供給してやるかわりに、彼はいつも俺のために冷凍食品をサーブしてくれる。ギョウザ。コロッケ。冷凍食品の賞味期限はあってないようなものだが、刻一刻と俺の賞味期限は近づいて