2010年代前半にブームとなった「ボカロ小説」が2020年になって再び注目を集めている――ただしかつてとはやや違うかたちで。 ■そもそもボカロ小説とは? ボカロ小説とは、基本的には「ヤマハが開発した合成音声ソフト・ボーカロイド(代表的なものは初音ミク、鏡音リン・レンなど)を用いてつくられた楽曲を原作とする小説」のことだ。 事実上の嚆矢は2010年に刊行された悪ノP(mothy)による『悪ノ娘 黄のクロアテュール』(PHP研究所)。 ボーカロイドを使った曲自体は、初音ミクが2007年に発売されると、前年にサービスが開始してネット民を惹きつけていた動画投稿サイト「ニコニコ動画」でブームとなり、2020年現在に至るまで、ボカロ文化は数々の名曲と数多のクリエイターを輩出している。 その盛り上がりのなかで、物語性の高い楽曲が投稿され始める。初期の注目作が2008年4月に投稿された悪ノP「悪ノ娘」「悪