サマリー:前回から引き続き、エージェンシー理論を学んでいく。エージェンシー理論は、企業組織に起こるさまざまな問題を説明しうるものである。この理論を知ることで、コーポレートガバナンス強化の手がかりが得られるだろう... もっと見る。本稿では、コーポレートガバナンス分野でよく議論されるモラルハザード問題を4つ紹介する。本稿は『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社、2019年)の一部を抜粋し、紹介したものである。 閉じる ──前回の記事:人間が合理的だからこそ、組織の問題は起きる(連載第30回) プリンシパル=エージェント関係は、株式会社の本質 企業とは誰のものだろうか。もちろん「顧客のもの」「従業員のもの」「社会のもの」といった意見もあっていいが、この世が資本主義で株式会社制度を持つ以上、株主も企業(株式会社)の所有者の一部であることには異論がないだろう。 他方で、株式会社制度には「所有と経営