インドには古来独自の文化を持ったドラヴィダ人が住んでおり、インダス文明を形成してかなりの繁栄をしていたことは歴史的事実である。ところが、紀元前16世紀ごろにアーリア人がパンジャブ地方に侵攻して、さらにガンジス川流域を開発することによって、現在のインド文化の原型を形作ったと思われる。 かれらアーリア人は、その信仰を通して価値観や生活様式を数世紀にわたって聖典にまとめ上げた。それがヴェーダと呼ばれる聖典である。おそらくは、すべて記憶によって伝承されていたと考えられるが、後に文献として遺されることとなった。 ところが、紀元前7世紀頃になって、ウパニシャッドと呼ばれる最終期のヴェーダ時代に入って、哲学的な思索期に入る。これを最後のヴェーダという意味でヴェーダーンタと呼ぶこともある。 この時期に、インドで現れる大半の価値規範が形成されたと考えてよい。輪廻や業、さらには梵天や我という概念も、このウパニ