明石の入道も今後のいっさいのことは 神仏に任せるというようなことも言ったのであるが、 源氏の愛情、娘や孫の扱われ方などを知りたがって 始終使いを出していた。 報《しら》せを得て胸のふさがるようなこともあったし、 名誉を得た気のすることもあった。 この時分に太政大臣が薨去《こうきょ》した。 国家の柱石であった人であるから 帝《みかど》もお惜しみになった。 源氏も遺憾《いかん》に思った。 これまではすべてをその人に任せて 閑暇《ひま》のある地位にいられたわけであるから、 死別の悲しみのほかに責任の重くなることを痛感した。 帝は御年齢の割に大人びた聡明な方であって、 御自身だけで政治をあそばすのに 危《あぶな》げもないのであるが、 だれか一人の御後見の者は必要であった。 だれにそのことを譲って静かな生活から、 やがては出家の志望も遂げえようと思われることで 源氏は 太政大臣の死によって打撃を受け