世界のどの国からも国籍を認められない「無国籍」とされる人々がいる。 多くの人が強く意識せずに持っている「国籍」を、その人たちは持たない。遠い外国の話と思うかもしれないが、日本にも無国籍者は少なくないと言われる。三重県で生まれ育った弘明さんも、そのうちの一人だ。 彼は日本の国籍を持たず、それ以外の国籍も持たずに育った。幼い頃から乳児院に預けられ、18歳までは児童養護施設で暮らした。 日本で生まれ、日本で育ったにも関わらず、弘明さんはどのような経緯で無国籍になったのか。日本の制度の中で、なぜ彼の無国籍は放置されてきたのか。弘明さんはこれまで、どんな人生を過ごし、何を感じてきたのか。 弘明さん、最も近くで彼を支えた児童養護施設の方々、そして彼の国籍取得に奔走した弁護士から、話を聞くことができた。 弘明さん。22歳。 なぜ無国籍になってしまったのか ――弘明さんが無国籍になった経緯から教えていただ