「ひとりで歩きたい。みんなが困っている時だからこそ、みんなの手をかけないように、自分で移動したいのに…」。 視覚に障害がある男性のことばです。 いま3か所目の避難所で暮らすこの男性。被災後、想像もしていなかった苦労に直面しました。 (能登半島地震取材班 大村和輝・河村柚花) 石川県珠洲市で被災した大口史途歩さん、51歳。大口さんは、20歳のころから、網膜色素変性症という網膜の病気により、徐々に視野が狭くなり、現在は、明るいか暗いかがわかる程度で、ほとんど見えていません。 地震の前までは、白杖を使って一人で移動。特別養護老人ホームで機能訓練指導員として、利用者にマッサージやリハビリを行う仕事をし、家族の助けをほとんど借りずに自立した生活を送っていました。 1月1日。自宅の2階で休んでいたときに、大きな揺れが。ニュース速報を聞こうとした瞬間、家がバキバキと音をたて、ふすまが割れて飛んできました