クロダイによるノリ養殖の食害は、全国の産地で問題化している。しかも、被害は拡大傾向にあり、生産者にとっては死活問題だ。主に神戸・須磨の養殖現場に足を運ぶ中で私(記者)は、かつて取材したことがあるブラックバスの増殖を思い浮かべるようになっていた。外来種ながら日本で生息域を広げ、湖や池の貴重な在来種を圧迫するブラックバスが、大切に育てられたノリに群がるクロダイに重なるのだ。 第1章 暴食クロダイを追え(5) だが、この食害という現象をクロダイの側から考えてみると、少し違った光景が見えてくる。 広島大の海野徹也教授(水産増殖学)は、クロダイを研究する世界的にも数少ない専門家だ。釣り好きだった少年時代、「もっと勉強すれば、釣りにくいクロダイを釣れるようになるかもしれない」と、大学で水産学を専攻。そのままクロダイの研究者になった。研究熱心なあまり、「逆にクロダイに釣られている」と周囲から評されている