――場所や名前などの配慮はしておられますが、本作はすべて実話をもとにした“オールリアル”とのことです。特に、押川さんの印象に残っている事例はありますか。 4巻に出てくる黒澤美佐子(仮名)のケースはすごかったですね。長年の引きこもりで、ドアを開けたら部屋一面にティッシュのゴミが山積みになっていて。 移送のときに救急隊、消防隊、役所、警察も立ち会ったんですが「これはもう押川さんのやる分野じゃない」っていうんですよ。汚物がマンションの下階の壁にまで染み出している状況で、役所の衛生課が出てきましたから。 しかも、そのことを依頼者である親がすべて隠していたんです。ウジもわいているし、臭いもひどい。それを、私たちに片付けろと言っていたんです。 ――最後にその父親から「訴える」と言われていましたね。 あれも事実です。地方のちょっとした名家だったんですが、「大ごとにしやがって」と殴られたあげく、その父親の