毎年、このくらいの時期になるとクリスマス・アルバムのリリースが盛んになるのだが、2020年の目玉はなんといってもチリー・ゴンザレスの『A very chilly christmas』ではないだろうか。すっかり代名詞となった「solo piano」シリーズの延長線上にある、ピアノ・ソロを基調としたサウンド・アプローチで「Silent Night」「Silver Bells」「Jingle Bells」などの定番曲から、ワム!「Last Christmas」、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」といったポピュラーミュージックまでを取り上げている作品である。これだけなら凡百のクリスマス・アルバムとなんら変わりないのだが、本作のユニークなところは、これらの楽曲が「短調」すなわちマイナー・キーで演奏されている点にある。このアプローチは、ゴンザレス自身の