メスキータ最大の見所の1つは、アルハカーム2世の命で作られた豪華なミフラーブです。金色や青色のモザイク装飾が施された馬蹄型アーチの周囲にはぐるりとコーランの一節が刻まれています。モザイクでできているとは信じ難いような美しく緻密な装飾は、どれほど眺めていても飽きることがありません。世界中のイスラム教徒はサウジアラビアのメッカにあるカアバ神殿の方向に向かって1日5回の礼拝を行いますが、その方角(キブラ)を示すのが、モスクの壁に作られたミフラーブという聖なる窪みです。偶像崇拝を禁じられたイスラム教では方向を示す目印にも像や絵画といったシンボルになりかねないものを用いることができません。草花や幾何学模様の美しいモチーフが用いられることが多いミフラーブは、イスラム美術の数少ない見せどころとなっています。その証拠に、カリフはこのミフラーブのためにビザンチンスタイルのモザイク職人を呼び寄せたそうですから