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  • メルヴィル 著『白鯨(中)』より。「小説」も「教育」も、つまるところ「何でもあり」なのだ。 - 田舎教師ときどき都会教師

    幹から枝が生え、枝から小枝が生えるように、豊饒なる主題から、あまたの章が生まれる。 前章でふれたクロッチについては、独立の章をもうけて論じる価値がある。それは先端が三叉に割れた特殊な形態をもつ棒で、長さが二フィートほどあり、ボートの舳先近辺の右舷舟べりに垂直にさしこまれ、その三叉のところに銛の木製の柄の末端をのせ、その先にある抜き身の「かかり」のついた鋼鉄製の刃先をやや上向きに傾斜させて舳先から突き出しておくための仕掛けである。 (メルヴィル『白鯨(中)』岩波文庫、2004) こんにちは。幹から枝が生え、枝から小枝が生えるように、教育という豊饒なる主題から、あまたのブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)が生まれ、沈みかけているのが学校です。どうかしてる、度を超してる、わかりますか(?)って、髭男じゃなくても歌いたくなります。何の価値もない土曜授業という枝は切ればいい。何の価値もない宿題

      メルヴィル 著『白鯨(中)』より。「小説」も「教育」も、つまるところ「何でもあり」なのだ。 - 田舎教師ときどき都会教師
    • メルヴィル 著『白鯨(下)』より。もしもエイハブ船長がサードプレイスから白鯨のことを考えていたとしたら。 - 田舎教師ときどき都会教師

      凪のあとには嵐があり、嵐のあとには凪がある。人生はただ事もなく一直線にすすむことはない。人生は階段をのぼるように進行し、それをのぼりつめたところで、はい、おしまい ―― というようなものではない。幼児期の無意識の魅惑、少年期の盲信、青年期の迷い(これは避けがたい宿命である)、それから懐疑主義、つぎに不信、そして最後に壮年期の『もしも』という優柔不断な思考の終着点に到達して、はい、おしまい ―― というわけにはいかないのだ。一度この過程をふむと、またその過程をくりかえすのだ ―― 幼児、少年、おとな、『もしも』を永遠にくりかえす。 (メルヴィル『白鯨(下)』岩波文庫、2004) こんばんは。以前、もうすぐ喜寿を迎える作家さんに「ライフチャート」を見せてもらったことがあります。みなさんは、やったことがあるでしょうか。縦軸に幸福度、横軸に年齢をとって、例えば大学入試に失敗したときはちょっとマイナ

        メルヴィル 著『白鯨(下)』より。もしもエイハブ船長がサードプレイスから白鯨のことを考えていたとしたら。 - 田舎教師ときどき都会教師
      • 映画『ザ・ホエール』(ダーレン・アロノフスキー監督作品)より。メルヴィルの『白鯨』とのコラボが素晴らしい。 - 田舎教師ときどき都会教師

        『ザ・ホエール』のチャーリーは、恋人を亡くした喪失感と自分が捨てた愛娘エリーへの罪悪感に苦しんでいる。そうしたチャーリーのつらい過去は主にセリフで語られるが、真っ先に観客のド肝を抜くのは体重272キロの尋常ならざる巨体だ。 (劇場用パンフレット『THE WHALE』東宝、2023) こんにちは。先日、とある読書会に参加しました。その中で、日本の文壇は作家のマルチな活動を評価しないという話がありました。それは「おかしい」というニュアンスの話です。例えば石原慎太郎(1932ー2022)は、文藝評論家の江藤淳(1932-1999)に「なんで政治家なんてやるんだ」と苦言を呈されたとか。『元号考』を書いた森鴎外のように、国家の成り立ちのところで文学をやっていた先輩もいるのに。欧米では作家がマルチな活動、特に政治的な活動をするのは普通だそうです。むしろ国民が望んでいる。しかし現代の日本では、文壇という

          映画『ザ・ホエール』(ダーレン・アロノフスキー監督作品)より。メルヴィルの『白鯨』とのコラボが素晴らしい。 - 田舎教師ときどき都会教師
        • メルヴィル 著『白鯨(上)』より。鯨を恐れないような者は、私のボートにはひとりも乗せん。 - 田舎教師ときどき都会教師

          「白鯨のゆがんだあぎとでも、死のあぎとでも、わたしはひるみません。エイハブ船長、それがちゃんとした商売の道理にかなっているのならば、です。わたしがここにおりますのは、鯨をとるためでして、船長の復讐に手をかすためではありません。たとえあなたの復讐がうまくいったとしても、鯨油にして何バレルになるでしょうか、エイハブ船長? ナンターケットの市場では、さしたるもうけになりませんよ」 (メルヴィル『白鯨(上)』岩波文庫、2004) こんばんは。金曜日は近しい人との「思いがけずディナー」、土曜日は作家・映画監督の森達也さんによる「思いがけずリポスト」、そして日曜日の今朝はNPO授業づくりネットワークの理事長である石川晋さんからの「思いがけずいいね」がポスト直後にあって、土曜授業でくたくただったとはいえ、「思いがけず幸せ」なここ3日間になりました。中島岳志さんの著書のタイトルにあるように、 思いがけずっ

            メルヴィル 著『白鯨(上)』より。鯨を恐れないような者は、私のボートにはひとりも乗せん。 - 田舎教師ときどき都会教師
          • 町田そのこ 著『52ヘルツのクジラたち』より。メルヴィルの『白鯨』にも、村上龍さんの『歌うクジラ』にも負けない傑作。 - 田舎教師ときどき都会教師

            52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿はいまも確認されていないという。 (町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』中央文庫、2023) おはようございます。昨日、1学期が無事に終わりました。ホッとしています。どれくらいホッとしているのかといえば、365日の中でいちばんといっていいくらいホッとしています。とはいえ、油断大敵。あまりにもホッとし過ぎたために、終業式の夜に発熱してそのまま10日間の隔離生活を余儀なくされたんですよね、1年前は。だから今年はホッとしつつも、村上春樹さんいうところの《歌はもう終わった。しかしメロディーは鳴り響いている》を意識して、戦闘モードを完全には崩していません。誰にも届かない歌声をあげ続ける「52ヘ

              町田そのこ 著『52ヘルツのクジラたち』より。メルヴィルの『白鯨』にも、村上龍さんの『歌うクジラ』にも負けない傑作。 - 田舎教師ときどき都会教師
            • 古井義昭『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』の取扱説明書 - Write off the grid.

              古井義昭『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』が法政大学出版局から刊行された。本エントリは、本書のおそらく最速にして、今後だれも書かないであろうタイプの、奇怪な1万字の書評である。 Amazon.co.jp 古井義昭『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』 いそいで最初に言っておかなければならない——本書はハーマン・メルヴィルという19世紀のアメリカの小説家についての専門書なのだが、以下の文章は、メルヴィルにも、アメリカにも、文学研究にも関心がない読者にむけて書かれている。念頭にあるのは人文系の院生や研究者だが、もしかすると一般読者にも楽しんでもらえるかもしれない。 そもそもわたしはメルヴィルという作家について、おそらくそのへんの海外文学好きの読書家たちよりも無知である。以下は、人文系の論文の書き方を学ぶための参考書として本書を活用するための取扱説明書だ。 本稿が注目するのは、本書の内容より

                古井義昭『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』の取扱説明書 - Write off the grid.
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