2003年1月、ワシントンD.C.――スミソニアン国立動物園のほの暗い展示室で、薄桃色の毛のない小動物がうごめいている。「何かの赤ちゃんかな?」展示ケースに近寄った私は、思わず息をのんだ。 な、な、なに?? この動物、なに??? それが、ハダカデバネズミと私との衝撃的な出会いだった。ハダカデバネズミ、漢字で書くと、裸・出歯・鼠。名は体を表す。裸で、出っ歯の、鼠である。 動物好きではなくとも、名前くらいは聞いたことがある方も多いかもしれない。今やハダカデバネズミ(以下、デバ)は、変わった生き物を特集したテレビ番組や書籍の常連となっているし、国立科学博物館の大哺乳類展2のポスターではあまたの人気大型哺乳類たちを引き連れて先頭を歩く姿が描かれ、グッズもたくさん販売される、珍獣界のスターなのだ。 本書は、その、裸・出歯・鼠を、からだのつくりから生態や研究のあゆみなど、豊富な写真やイラストとともに、