周囲に何もない。乗客もほぼいない。それでも列車はやってくる「秘境駅」。日常とかけ離れた時間の流れを味わいに訪れる人は多い。全国区の人気を誇る秘境駅は観光スポットや町おこしの資源にもなっている。そんな駅のひとつが北海道の宗谷線にある糠南(ぬかなん)駅(幌延町)だ。 テレビにも登場広大な牧草地の中にポツンとある。なぜ、ここに駅があるのか不思議だ。短い編成の列車しか止まれないホームは板張り。その横には待合室としてヨドコウの家庭用物置が置かれ、内部にはビールケースに座布団を敷いたイスがある。平均乗車人員は0・0人。山の中ではないので、車で行くことは比較的安易だが、停車する列車は1日上下6本と少なく、駅の持つ雰囲気は間違いなく秘境駅だ。 糠南駅は昭和30年、国鉄本社でなく、地元の管理局が設置する仮乗降場として誕生。「朝礼台」といわれる簡易なホームはその名残。全国版の時刻表には掲載されなかった。62年