哲学史上最重要書であり、超難解であることでもよく知られるカント『純粋理性批判』。そのロングセラー入門書の著者であり、カント哲学に長年取り組み続けてきたことで知られる黒崎教授でしたが、近年は思うところあり、大学の講義ではカントを正面から取り上げてこなかったそうです。そんな先生も、ついに定年を迎えるこことなり…… SNSとAIの時代に生まれ育ったいまどきの学生が集う「最後のゼミ」で、カントの精髄を教えることはできるのか? 1+1=2がちょっとでも世界とズレていたら…… 定年哲学教授? えっと? あっと、それは私のことか、と思うほど、定年ということに実感がない。哲学をやるのだ、と決心したのは高校二年のときだから、それからもう約50年も経っている。<過去に見返す50年>はあっという間、という感覚だが、18歳のときに<未来に見通す50年>は、それこそ永遠、無限と感じられるほど長かった。それが定年を迎