80年前の1945年4月7日、戦艦「大和」が九州南西沖で撃沈された。「大和」の悲劇は戦後、小説や映画、ドラマなどで繰り返し描かれてきたが、そのさきがけとも言えるのが吉田満(1923~79年)の著書「戦艦大和ノ最期」だ。この作品には衝撃的な場面がある。大和沈没後、救助艇に手を伸ばす兵士たちの手首を船上の指揮官らが斬ったという「手首斬り」だ。海軍関係者は「事実無根」と批判するが、その真偽はどうなのか。 「十死零生」の水上特攻 吉田は東京帝国大学在学中、20歳で学徒出陣。海軍士官として「大和」に乗った。「大和」は太平洋戦争開戦直後の1941年12月16日に完成した。建造の費用はおよそ1億3780万円。当時の国家予算(一般会計歳出)の1・7%にあたる。戦時下とはいえ、1隻の軍艦にかけるコストとしては異例の高さだ。それだけ、大日本帝国海軍は「大和」に大きな期待を託した。 当時、他国の戦艦で最大の主砲