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フラナリーの検索結果1 - 4 件 / 4件

  • 刺さる鈍器『フラナリー・オコナー全短篇』

    ひとつひとつ読むたびに、重いもので殴られる感覚なので、感情が丈夫でないと辛い。それでいて、胸の奥まで抉り込まれた痛みが、一生刺さったままになる。O.ヘンリーの驚きと、ミヒャエル・ハネケの悪意の、幸福な結婚を味わえる。 最高に嫌になれる「善人はなかなかいない」は、人生で3回読んだが、3回とも感情が違う。わずか20ページと少しなのに、一生刺さったままになるだろう。 「善人はなかなかいない」は、おばあちゃん、息子と妻と子の家族が、自動車旅行に出かけた先で、大変な目に遭う話だ。 初読の感情 最初に読んだときは、驚いた。これで終わりにできるのか、と唖然とした。なにかの間違いであってほしいと願った。だが、どんなに目を凝らしても間違いはなく、運命は無慈悲だ。 2回で変わる 次に読んだときは、おばあちゃんに注目した。イエスキリストを信じ、自分を善なる存在だと疑わない。独善的という言葉がぴったりだが、そう言

      刺さる鈍器『フラナリー・オコナー全短篇』
    • 『フラナリー・オコナー全短篇』フラナリー・オコナー |目の中の丸太を叩き落とす、劇的な一瞬 - ボヘミアの海岸線

      「なにを言うの! 田舎の善人は地の塩です! それに、人間のやりかたは人それぞれなのよ。いろんな人がいて、それで世の中が動いてゆくんです。それが人生というものよ!」 「そのとおりですね。」 「でも、世の中には善人が少なすぎるんですよ!」 ーーフラナリー・オコナー「田舎の善人」 2019年は、前半に「重力」と言い続けて、後半は「恩寵」と言い続けた年だったように思う。飲み会では「タイムラインが恩寵だらけになった」「『重力と恩寵』はふくろうの妄想だと思っていたら、実在する本だったので驚いている」と言われた。このような恩寵モードになったのは、『フラナリー・オコナー全短篇』を読んだからだ。 恩寵とは、人間に与えられる神の慈愛、神の恵みのことで、熱心なキリスト教徒であるオコナーは「恩寵の瞬間を描く作家」と言われている。だが、オコナーが描く恩寵は、恵みや慈愛といったあたたかいイメージとはほど遠く、血と暴力

        『フラナリー・オコナー全短篇』フラナリー・オコナー |目の中の丸太を叩き落とす、劇的な一瞬 - ボヘミアの海岸線
      • 『秘義と習俗』フラナリー・オコナー|私は南部とキリスト教の小説家 - ボヘミアの海岸線

        真のカトリック小説は、人間を決定されたものとは見ない。人間を、まったく堕落したものと見ることはない。かわりに、本質的に不完全なもの、悪に傾きやすいもの、しかし自身の努力に恩寵の支えが加われば救済されうるものと見るのである。 ――フラナリー・オコナー『秘義と習俗』 小説家が、作品の意図や背景について語ることはめずらしい。小説家は小説で語り、読みは読者にゆだねる存在だと思っていた。ところがフラナリー・オコナーは『秘儀と習俗』で、自分の作品に通底するものや背景、作品の意図についてびっくりするほど率直に語る。 秘義と習俗―フラナリー・オコナー全エッセイ集 作者: フラナリーオコナー,サリーフィッツジェラルド,ロバートフィッツジェラルド,Flannery O'Connor,Sally Fitzgerald,Robert Fitzgerald,上杉明 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 1999/1

          『秘義と習俗』フラナリー・オコナー|私は南部とキリスト教の小説家 - ボヘミアの海岸線
        • フラナリー・オコナー『全短篇』(ちくま文庫)読書会まとめ|三柴ゆよし

          【日時】2019年11月23日(土)13:00~17:00 【場所】カフェ・ミヤマ 渋谷東口駅前店 【参加者】8名(主催者含む) 難病に苦しみながらも、39歳の若さで亡くなるまで精力的に書き続けたアメリカ南部の作家、フラナリー・オコナー(1925-1964)の作品は、日本では書簡集や評論集まで含め、ほとんどすべてが翻訳(書簡集は抄訳)されています。 今回の課題本は『全短篇』でしたので、オコナーの作家としての人生を、ある意味で包括するものであったといえるかもしれません。そのため、読書会では話題が拡散してしまうのではないかという危惧があったのですが、意外にも議論の焦点はいくつかに絞られていたように思います。すなわち、 ① キリスト教の教義やモチーフについて、どのような部分が、どの程度まで作品に生かされているのか? ② オコナーはこれらの作品で「悪意」を描いているのか? あるいは悲惨な目に遭遇し

            フラナリー・オコナー『全短篇』(ちくま文庫)読書会まとめ|三柴ゆよし
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