今年は詩人・石原吉郎の生誕100年。『現代詩手帖』11月号の特集や62年の生涯と作品を検証した細見和之著『石原吉郎−シベリア抑留詩人の生と詩』(中央公論新社)に続き、詩人・野村喜和夫による力作『証言と抒情・詩人石原吉郎と私たち』(白水社)が出た。野村の視点は、シベリア強制収容所の極限を経験した詩人の痛苦を現代に引きよせ、詩の表現の本質に迫っているのが特長。3・11以後の、さらに戦後70年という困難な時代の認識が問われている。 「だが、危機のあるところでこそ、救うものは育つ。」(ヘルダーリン)との言葉がエピグラフとして冒頭に引用される。その通り、まさに極限の危機を体験した人間が紡ぐ言葉は「証言」であるのか、また「抒情」か。そしてポエジーの本質は、すべてを語りつくすことではなく、石原の詩のように沈黙から、また「書くまいとする衝動」からやむを得ずに生まれ出る表現であることに気づく。隠喩にみちた言