田村隆一という詩人との出会いは、よくおぼえている。大学2年時の10月、場所は在籍していた学校の図書館だった。もっとも、かねてその存在は、あるノンフィクション作品を通じて、知ってはいた。対談を基調としたその本のなかで、詩人は快活に、気さくに、しかしどこかに深手を負っている人でもあるかのような、ふしぎと寂しげな声で語らっていた。初めて来たのに、どうもなつかしい、そういう景色に、旅先でぶつかることがあるけれど、そんな郷愁に似たものを私は詩人に感じて、ひそかにあこがれていた。 書架から引き抜いたのは『詩集1946~1976 田村隆一』という、太平洋戦争では学徒動員で兵役に就き、戦後にその本格的な文学活動を開始した詩人の最初期の5つの詩集が収められた、76年の時点での全詩集だった。40歳を過ぎたいまでもそうなのだが、これだ、と感じたものを前にすると、私は座っていられなくなる。このときもそうで、ほかに