<1面からつづく> 迷彩服にマスク、ゴーグル、ゴム手袋姿。8人は無言で作業を開始する。ブルーシートを張った6メートル四方の空間。特殊な車両から延ばしたホースで水を出す。ていねいに、泥を落としていく。 昨年3月18日から宮城県角田市の警察署のわきで行われた陸上自衛隊の「遺体洗浄」の現場は、とても静かだったという。自衛隊では初めての任務。マニュアルも、上官からの指示もない。隊員たちは手でさするように水をかけた。1人が背中に手を差し入れると、別の何人かでゆっくり抱くように持ち上げて背中に水を当てる。髪にからまっているのは泥なのか草なのか。それらを溶かしてゆく。 「ご遺体とは思っていませんでした。『家に帰れるのを待ちわびている方』だと考えていました。お顔をきれいにしたり、警察の検視で傷口が見えやすいようにしたりしながら、『ようやく帰れますね、よかったですね』と心で思うようにしていました」 遺体の洗