はじめに 見過ごされがちだが、現代の君主制国家の一部には「男尊女卑」ならぬ「女尊男卑」の傾向がみられる。 君主制と「女尊男卑」というワードの連関として、わが国の皇位継承議論を思い浮かべる方もおられよう。保守派の中には、男系に限る皇位継承方法について「一般女性は誰でも結婚によって皇族になれるが、一般男性はなることができない。ゆえに、男尊女卑ではなくむしろ女尊男卑だ」と主張する者も少なくないからだ。 皇室は外部の女子は受入れてきたが、外部の男子を一人も受入れてこなかった。それが男系継承の趣旨である。つまり、女性宮家の拒絶は、女性を排除するのではなく、男性を排除する考えなのである。これは男尊女卑ではなく、むしろ女尊男卑というべきであろう。 ――竹田恒泰(『正論』8月号、2017年) しかし、今から取り上げていくのはその話ではなく、ヨーロッパにおける女性君主の配偶者への処遇についての話である。 欧